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| 塚本さんは型にはまらない人だ。と同時に、その歩んできた道は肩肘を張らない人生のようにも映る。大学在籍中に世界各国を巡り、グローバルな視野を培ったことが良い影響を与えたのかもしれない。卒業後は、縁あって身体に優しい食材を使ったレストランのシェフに就き、週末にはスイス出身の奥さんのために自家製酵母でパンを焼いていた。その美味しさが評判となり、パン職人として工房を構えることとなった。ただし、他のパン職人とは違い、店頭販売はせずに受注生産というスタイルを選んだ。工房を構えた場所が人里離れた京都の山奥だったことや、今ほど天然酵母が認知されてないなかで、ニーズのあるところへダイレクトに届ける方が、パンの価値をわかってもらえると考えたからだ。 |
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手がけるパンはすべて自家培養酵母で生地を作り、中心となるサンフランシスコサワーの他にいくつかの酵母を使い分けている。自家製酵母の面白いところは、パンを作っている環境がパンに反映するところだと、塚本さんはいう。酵母菌は生き物であるし、工房の中に棲む幾多の菌が交じり合って、その店独自の味が生まれる。塚本さんが捏ねて伸ばし、成型していく間に、この工房の生地は工房を包み込むように広がる木々や草花が放つ自然の息吹を中に練り込んでいるのであろう。
使用する材料はオーガニック素材であったり国産の小麦であったりする。しかし、そうした材料を使っているということは、塚本さんにとっては何ら力説することでもなく、誤解を恐れずにいえば、あえてオーガニックに固執するつもりもあまりない。大切なのはできるだけ安心できる材料で美味しいパンを焼くこと。オーガニック素材だから必ずしも美味しいかというと、イコールではない場合も多い。 |
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| 型にはまらないように見えるとはいえ、塚本さんのパン職人としての姿勢は、工房を開いた当初から一貫している。パリやドイツなどにも足を運び、彼らが持つ伝統の製法や最新の技術を習得し、どんなときでも工房のなかで呼吸を続ける自家製酵母のことが頭から離れることはない。夏は暑く、冬は寒さが極まる京都の山奥で四季のリズムに合わせながら酵母が発するメッセージを聞き、急な天候の変化を感じると夜中でも飛び起きて、工房に向かう。「一日15時間労働だよ」と塚本さんはわざと眉間にしわを寄せるが、それでもとても楽しそうである。塚本さんのパンやクッキーを口にすると自然と気持ちが和むのは、彼自身が等身大でパンを作っているからに他ならない。 |
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| 以前はフランスから取り寄せたレンガ造りの釜を使用していたが、排煙の問題で使えなくなった。 |
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| パンが焼きあがると工房いっぱいに香ばしい香りが広がる。 |
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| 工房の周囲は、一面の緑。まさに自然のなかでのパン作りだ。 |
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| 焼きあがったパンの出来を確かめるときが、この日一番の笑顔だった。 |
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