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世界最大級のカルデラと雄大な外輪山を誇る九州・阿蘇。その、およそ真ん中に位置する駅から少し離れたところに、小さな菓子舗がある。店のトレードマークの真っ赤なオーブンで焼かれる菓子は、いずれも香り豊かで穏やかな甘さに満ちている。食べ物は全て、作る人の気持ちが形になったもの。店主の中村浩さん・仁美さん夫妻は、とても大きな想いを持って菓子作りを続けている。 中村仁美さんは、地元の客を大切にする菓子舗に生まれた。小さいときから祖父が、そして父が作る菓子を頬張り、5つ上の兄・光宏さんとともに自然が溢れた健やかな環境で育った。仲の良かった兄は成人して店を継ぎ、仁美さんは栄養士の道を選び、充実した生活を送っていた。ところがある日、突然の悲劇に見舞われる。穏やかで仁美さんを可愛がってくれていた光宏さんが、作業中の事故で突然他界してしまったのだ。茫然自失となり言いようのない悲しみに打ちひしがれる両親。仁美さんにとっても耐え難い状況だった。だが、自分が何とかしなければ。自身の悲しさを抑え、中村さんはある決意をした。「お兄ちゃんの代わりに私が店を継ごう。それ以外に両親を悲しみから立ち直らせる方法はない」。と同時に、学生時代からの付き合いだった浩さんに、別れを伝えた。ところが、全ての事情を知っている浩さんは、別れではなく仁美さんを支え、一緒に頑張っていくことを選んだ。当時、大きなやりがいを感じていた仕事を持っていたが、一番大切なものは、仕事ではなかった。それから、2人の二人三脚が始まった。
まずは、製菓の基本を学ばなければならない。仁美さんは、光宏さんの恩師にこうて職人として店に来てもらい、基礎を2年間かけて徹底的に身に付けた。自分がやらなければという使命感が、仁美さんを支えた。 恩師からお墨付きをもらった後は、光宏さんが集めていた専門書のなかでも、最も思い入れのある本の著者が主宰するスクールに通い始めた。月に1度、6年以上の間、美味しいお菓子を作りたい一心で、阿蘇と東京の往復を繰り返し、いつも最前列で受講した。その間、店の切り盛りは浩さんが行い、慣れない仕事を文句ひとつ言わずにこなしてくれ、やがて菓子作りもこなせる腕に成長していった。 仁美さんが手がける菓子は、甘さがとても優しいのが特長だ。上質な素材を惜しまずに使い、丁寧な作業をいくつも重ねていくことで、膨らみのある味に仕上げていく。ふかふかロールケーキは、その集大成といもいえる一品だ。牛乳や卵など地元・阿蘇産の新鮮なものを使用し、生地を丁寧に仕込み、その名の通りふかふかに仕上げていく。塩味チーズクッキーは、洋酒のおつまみにもできる一品。東京に通いつめて会得した技術を如何なく発揮した、個性的なクッキーである。食べ物は全て、作り手の想いが形になったもの。優しい甘さに満ちた中村さん夫妻の菓子は、彼らの想いそのままに、食べる人にふわふわと幸せな気持ちにさせてくれるに違いない。