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| 魚をすり身にして野菜や調味料を加えて揚げたさつま揚げ。そのルーツは琉球から伝わったとも、稀代の薩摩藩主であった島津斉彬が作らせたともいわれる、鹿児島の食卓に馴染み深い食べものだ。県内に数多くあるさつま揚げ店は、それぞれに独自の個性を追求しながら切磋琢磨を続けている。カワノすり身店も、そのなかの一軒だ。
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河野良子さんが、店を始めたのは約25年前。当初は商売というより、主婦業の合間にすり身を作り、ご近所に分ける程度であった。それが徐々に評判となり他県からも声がかかるようになった頃から、本格的に商品として量産し積極的に販売もするようになった。漁師であった夫の宣弘さんは、この時期に良子さんと共に店に入り、夫妻での二人三脚が始まった。二人とも良いものならいくらでも吸収したいという姿勢でいたせいであろう、夫妻の周辺にはいろんなアドバイスをしてくれる人が現れた。
さつま揚げを作る際に品質を左右する油の情報を得たのは河野さんのさつま揚げ作りの大きな転機になったという。当初使用していたのは大豆油。それを菜種油に変えた。さらに、いろいろな菜種油を試すうち、この店のさつま揚げに合うようにと、特注で菜種油を作ってくれる製油メーカーが現れた。すり身の練り加減や成型した時点での大きさや水分量などに合わせて菜種の煎り方や絞り具合を細かく調整してくれたのだ。遠くまで出向いてよい商品を作りたいと説明した、河野さんの真摯な姿勢が伝わった結果だった。すり身に練り込む野菜や調味料についても多くのアドバイスを得た。本当に良質なものを作ろうとしたとき、化学調味料などは不要であるということ、野菜についても、農薬や化学肥料などに頼らずに育てたものを多く使用するようになった。努力して、しかしそれを苦労と思わず、美味しいものが出来たときの楽しみに変える。「小さい店やけん、出来ることもある」。宣弘さんは、南国育ちならではのプラス思考で明るく笑う。
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| この店のすり身のベースとなるのは、シイラという大魚。淡白な味わいが気に入っていて、そこに近海で獲れた魚などを加えて小骨ごと二度、磨り潰す。販売店舗を構えていない河野さんは注文主の依頼に応じてさつま揚げを作るが、すり身に混ぜ込む野菜などは手作業で皮をむいたり削いだりして、家庭的な匂いがする。サツマイモや豆入りのさつま揚げは、手で成型し特注の菜種油にゆっくりとくぐらせ、揚げ終わったら一枚ずつペーパーで油を拭き取っていく。揚げたてのさつま揚げは、しっかりと歯ごたえがあり甘みが舌に馴染む。気負わず衒わず、生真面目に作り続けることの大切さを実感した25年が作った一枚には、夫妻の思いが込められている。
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