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こだわりの食を求めて 取材日記

2005/10/21 甑島ゆかしい海の幸セット その2

海の上で天日干ししたきびなごが美味しくて、訊ねてきた甑島。

生産者の馬場さんや、漁師のみなさんのきびなごに対する気持ちに触れ、さらにさらに、惚れ込んでしまったわたくし。

すると、馬場さんが一言『いのくちさん、きびなごの船に乗らんですか? 面白いですよ』

「の、乗ります。ぜひ!」

とはいったものの、この日はもう東京に帰らなければならなかったため、泣く泣く串木野行きの船に乗り、帰京。それから週末も休まずに、予め組んでいた過酷な取材日程をこなし、なんとか調整をして、甑島に戻ってこれたのは2週間後。

この日は、鹿児島県内にある、他の生産者を巡った後、現地入り。天候次第の出航ゆえ、今回は余裕を持って甑島に2泊し、甑島のよさを堪能する予定。

天気予報によると、明日より明後日のほうが天気がよさそうなので、一日めは、「ゆかしい海の幸セット」の中に入っているつけ揚げの取材をすることに。つけ揚げというのは、さつま揚げのことです。

生産者の庵地優さんは、まだ20代ながらも、地元密着型のつけ揚げ店の3代目であり、且つ、前途有望な漁師でもある。

庵地さんが作るつけ揚げの原料となる魚の約半分くらいはいつも自分の船で獲った魚を使うんだそう。

何事も体験することがモットーのわたしは、もちろん庵地さんの船にも乗せてもらい、水上ドライブ。 途中、馬場さんが船から落ちそうになり冷や汗をかいた瞬間もありましたが、なんとか無事に終了しこのとき水揚げした魚で作った、揚げたてのつけ揚げも食べました。

庵地さんのつけ揚げはね、現地の人たちが食べる味そのものなので、甘め。でも、その甘さが不思議と焼酎にバッチリ合うのですよ。地元の食材とお酒って当たり前だけど、ホントに合うのよね。感心しちゃう。

で、つけ揚げの取材が終了すると同時に、ホテルに戻り、この日の就寝は夕方6時! そんなに簡単に寝れるはずはないのだけど、だけどきびなご船の出港は0時過ぎなので、とにかく横になることに。

寝れない。寝れない、、、、ねれない、、、。ねれ、、、コテッzzz。それから数時間後、多少の眠さは栄養ドリンクで振り払い、小さなホテルの裏口から、そろりそろりと外に出て、庵地さんと待ち合わせ。

海からの風はぬるめで、外は真っ暗。何しろ甑島には、信号は小学校の前にひとつだけ。それだって、小学生に「信号とはこんなもの」と教えるために教育的設置をしたもの。セキュリティどころか信号も要らない街。

もちろん、島の住人の顔はみぃんな知っている。のどかだね。

きびなご漁へは、ベテラン船長さんが操縦する船で出港することになり、船長さんにご挨拶したあとは、オレンジ色がまぶしいカッパとちょっとぶかぶかの長靴に衣替えし、いざ海へ!

深夜の海って、もっと怖いかと思っていたんだけど、この日の海はなんだかとても優しい印象で、べた凪なので大して揺れもせず、これで、月が出ていたらもっと綺麗だっただろうに、、と思っていたら、月明かりのある夜は、きびなごの漁がしづらいらしい。へぇぇ。

わたしが、のほほ〜んと海を眺めて機嫌よさそうにしている間に、船長さんは、魚群探知機をみながら網を投げる場所を探し続け周囲をチェックし、エンジンを停止。

きびなごは、刺し網漁で捕獲するんでありますが、刺し網っていうのは、狙う魚がいそうな海中に網を投げて、網目を通り抜けることが出来なかった魚を捕獲する方法。

小さなきびなごには網の目だって右の写真のように小さくする必要がある。

そうか、こんなに細い網目なら大丈夫そうだ、と思ったとたん、目の前がチカチカするくらい白くまぶしい光が船の上に灯る。驚くわたしに、船長さんは『これを海に沈めて、きびなごを集めるんよ』と穏やかな声で説明してくれた。

そして、その灯りが沈められた後は、それまでつけていた電球をすべて消して、きびなごが網に刺さるのを、じっと待つ。待つ。待つ。月明かりがあると、きびなごが獲れにくい、というのは、月光でさえもきびなごが反応して海中に沈めた光に集まりにくくなるだめだとか。

それから数分の静寂のあと、船長さんの掛け声が響くと、それからはも〜大変。

光を上げるとともに、がんがんと網を巻き始め、水揚げを開始。きびなごは、めちゃくちゃデリケートなので、スピードが勝負!

わたしは、邪魔にならないようあっちこっちによけながら、シャッターを切る。そして、網に刺さったきびなごは、どんどんと巻き上げ、船の上に集められる。

船の上でまだピチピチとしているきびなごは、きらきら光り跳ねるものもいてでも、とても弱い魚だから少しでも早く氷につけて鮮度を保持せねばない。この作業の間は、緊張した空気がぴんと張り詰め、どきどき。さらに、このあともう一回網を放って漁をして、この日は帰港。

港で待っていてくれた馬場さんは、きびなごを受け取り加工場へ。せっかく漁師さんたちが獲ったきびなごなんだもん、美味しく仕上げてね!と馬場さんに手を振り、わたしは漁が終わった船の片づけをしている船長さんたちの元へ。

すると、船長さんが『せっかく釣ったんやけん、持って行き!』とにっこり。実はわたくし、漁と漁の間の休憩時間に、漁師さんの力を借りて5キロ超の大物を2匹ほど釣っていたんであります。

このうち、一尾は漁師さんたちとの朝食のおかずとなり、もう一尾はそのまま持ち帰ることに。。。

こちらは、馬場さんが塩で仕込んだきびなごを海上で、天日干ししているところ。太陽と海風がいっぱい詰まった味ですよ。

〈取材・文 猪口由美〉
この取材をくわしく掲載した『こだわり倶楽部』は、こちら


甑島のきびなご
海上天日干しのおいしい干物

取材時の写真

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