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こだわりの食を求めて 取材日記

2005/04/01 村さんの鳴門わかめ その1

この取材の1週間前から毎日天気予報をチェックしつつ、現地に電話をかけ続け、「按配は?」「天気は?」「風は?」「波は?」
 
そして取材の前日 『うん、イケるとおもうわ。明日待ってますけん』という答えをもらって、よっしゃ〜、とガッツポーズ。

何しろこの時期を逃すと、また来年まで待たなきゃならないので、他の商品をあとに回し、最優先して調整してきた甲斐があるってもんです。


そして当日。 朝イチ便の飛行機に乗るためにいつもよりかなり早起きして、しっかりと日焼け止めを塗り、生産者から指示があった通り『汚れてもいい格好』を装着して、空港へ。


久しぶりの晴天のなか、すがすがしいフライトの先に待っていてくれたのは、 このヒト
 
村公一さんは、「セコムの食」に鳴門のわかめを提供してくれています。 180cmを超える巨漢なんですが、めちゃくちゃ温厚で優しくってそのうえかなりの食通。


実は、村さんが手がける魚は、市場の何倍もの値段で都内の飲食店がこぞって取引したがるような、実はすっごい腕前の漁師。


とはいえ、別に高級魚ばかりを狙っているわけではなく、その時期に鳴門で泳ぐ魚をそのまま釣り上げるようにしていて、今時分なら、ボラが美味しいんだよね〜なんていう調子。
 
で、何が凄いかっていうと、釣った魚の扱いが凄い!丁寧、とかいう言葉なんかじゃなくて、村さんの場合、その魚の気持ちそのものになれるヒトなんです。


例えば、普通の漁師さんが鯖を釣ったとき、トロ箱にポーンって軽く投げ込んだりしますよね。よく見る風景です。だけど村さんは、ぜーーったいにそんなことはしない。


『鯖の身長はいくら大きくても40cmあるかないかやろ?それなのに、人間の手の高さから落としたら、鯖は絶対ダメージ受けるに決まっとると思わん?』

『もし人間やったら背骨折って、ヘタすりゃ脳内出血やん』
 
『それにな、ずっと海を自由に泳いでいたのに、突然小さな水槽に入れられてまな板に乗せられて刃物で当てられて、死ぬんや〜と思った魚の身ってむちゃくちゃストレスを感じてると思わん?そのストレス受けた魚、 わいは、よう食わん』

こういう話をする村さんは、ほんとに痛そうに話すし、生き物への愛情というか、いたわりを生まれつき深く持っているヒトなんだというのがよくわかる。


こんな話って一瞬、きれい事に聞こえるんだけども、村さんを360度どこから突付いても、その姿勢の一切にウソ偽りがないところが、なんといってもすごい。


わたしは看護婦だったとき、よく「患者さんの立場に立って看護すること」と口をすっぱくして言われ続けたんですけど、村さんの場合、その対象が患者さんじゃなくて、鳴門の魚であり、もちろんわかめにだって溢れるほど注がれているんですね〜。


・・・と、なんだか生産者自慢になってしまいましたが、そろそろ本題に戻りましょう。


空港で再会を果たしたあと、村さん所有の軽トラの助手席に乗り、村さんの家族と採れたてのわかめが待つ海岸へ車を走らせること約10分。


案内された先には、砂浜の上に目の細かい網を敷き、そこにヒラヒラと並べられた真っ黒な布が海風を受けていて、この黒い布の正体が、、、そう。わかめなんです。


鳴門のわかめは、灰干しの技法を用いて乾燥させたものが多く、村さんのわかめも、その伝統の製法に基づいているのですが、食品に灰を使用することは、法律により禁止されているため、今は灰の代わりに炭を代用して作っています。


なにげなく置いてあるように見えるでしょ? でも違うんです。その日の風の強さや太陽光によって 炭のまぶし方を変えたり、かなりビミョーな調整が必要なんです。


村さんいわく『物言わぬわかめは、動きのある魚より もっとデリケートで難しい』 とか。


しかし、多くのわかめが機械的に乾燥⇒販売されるなか、ここまで心血注いでもらっているわかめは、きっとわかめ冥利に尽きるとおもうわぁ。


と、ここで一旦、村さんのご自宅に行き昼食をご馳走になることに。『今日のお昼は、わかめの味噌汁と白ご飯!それでいいかね?』

『もっちろん!』


かくして、いつもの如く、何の遠慮もなくお昼をご馳走になったのですが、そこでいただいたわかめが、そりゃもう絶品。

生わかめなの、生わかめ。 この時期にしか口にできない生わかめ。塩蔵のベタッとしたものではなく、味噌汁の中でループを描くらいシャキンとしているんであります。 


そして次に現れましたのは、生わかめのしゃぶしゃぶ!これがまた、凄いのです!


沸騰したお湯のなかに採ったばかりのわかめを浮かべるとそれまでの褐色から、鮮やかな緑色に瞬時に変身。


それを、口にしたときの幸せは、豪華な宝石を手にしたような感動!ではなく思いがけず小さくて愛らしい花束をもらったときの、驚きと感謝に近い感覚。


歯ごたえがね、とてつもなく素晴らしく、噛んでいると1m位離れていてもしゃきしゃきという音が聞こえてくるほど。そのうえ、磯の香りも強くたっぷりと含んだミネラル分が口の中でぐっぐと鳴門のうず潮のように広がるのであります。


ホントなら食事のときに、村さんにわかめの育て方なんかを取材するつもりだったのですが、ちょっとね、この旬の美味しさを目の当たりにして箸をおけるほど、わたくし、理性的な人間ではなかったようです。も〜、ばくばく食べちゃいました!

そして、たっぷりと腹ごしらえをしたあとは、いざ、鳴門の海に出陣。海の上は寒いからと、村さんの妹さんが用意してくれていたTシャツを3枚重ね、足元は分厚い靴下の上に、これまた用意していただいたジャージ。


さらに上下に防水着を羽織る前にお母さん愛用のカーデガンをお借りして、首のところまでボタンを留めて、完全防備のカッパで完成!


実際はこの上に、ライフジャケットも羽織っていたんですが・・・。
 
よし!準備は万事整った。 では早速、港に向かい、念願のわかめ漁に出航だ〜。


つづく。

〈取材・文 猪口由美〉
村さんの鳴門わかめ 2袋
村さんの鳴門わかめ 4袋

取材時の写真

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