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こだわりの食を求めて 取材日記

2006/03/17 村さんの生わかめ その2

村さんの鳴門若布の取材で、徳島を訪ねたのは2005年・春のこと。そこで初めて食べた生わかめに感動して、ぜひこの美味しさを多くの方にお届けしたいと考えてから、早や1年。やっと、この日を迎えました。

村さんが指定した「土曜日」は、数日前から続いていた悪天候がウソのように見事な晴天とベタ凪。空港で出迎えてくれた村さんも、『ホントいのくちさんは毎回、運がええわ。去年もそうだったし、今年だってこんなに晴れたんは1週間ぶりや』。

ふっふっふ、気合いですわ、気合い!だってね、わたしがあの美味しさを知ったからには、どーしても生わかめをお客さまに届けんといかん、使命のようなものさえ感じているんだもん。そりゃ、オテントウ様も味方してくれますよ。

早速、村さんの車に乗り込み村さんの家に向かい、お茶を飲む間も惜しんで自分の服の上から村さんの妹さんに借りたフリースの上下を着て、ウインドプレーカーを羽織り、さらに目にも鮮やかな青カッパを着て、長靴を履き軍手もつけ、完全防備で船に乗り込む。

では、いざ若布が待つ海域へ!

海上の風はまだまだ冷たいけれど、防波堤を越えてスピードを増した船は、爽やかな青い海に真っ白な波しぶきをたて、空にぽかんと浮かんだ低めの雲も波しぶきと同じくらい真っ白。

最初はぼんやりとしか見えなかった、鳴門大橋がくっきりと姿をあらわした頃、目的の生わかめが育っている海域に到着。

村さんいわく、今年は冬の冷え込みがキツかったので、それだけわかめも成長が抑えられ味が引き締まると同時に、この時期には、たっぷりの腐葉土を含んだ雪解け水が吉野川から流れ込むため、生わかめは最も旨みを増すんだそうです。

ただ、わかめが早く成長することと美味しくなることとは別問題で、さらにいうなら、同じ鳴門の海であっても、10mとか20m海域が違うだけで、味の違いは歴然なんだって。

それは海水の流れというのはその地形と風向きなどでおよそ決まっていて、その海流にたっぷりの養分が含まれていれば、そこで育つわかめは当然美味しくなるわけです。

海の中にも“一等地”は存在するんですね!こちらは、わかめに手を伸ばす村さん。

村さんは2ヶ所、自身の養殖場場を持っているのですが、今回出荷してもらう生わかめはもちろんのこと、カタログでご紹介している「村さんの鳴門若布」も、この“一等地”産。

わたしが海を覗き込んで面白そうに眺めていると、船尾の方から村さんが『ここの海の水、手ですくってなめてみるといいわ』。

素直に従い右手を海の方に伸ばし、海面に触れてそのまま口に運んでみると、、、。

「あ、あんまりしょっぱくない」

『そうやろ、これが汽水域の海水の味なんよ』。

なぁるほど、だから塩味が淡いんだ。わたしホントに村さんのことが大好きなんですが、それは常に相手の気持ちを汲み取ることが出来る方だからなんです。

そして村さんの場合、その相手というのは、何も人間だけじゃなくて、釣りあげる魚や生若布や、自分が使う道具に至るまで全て。そこがすごいの。

例えば、生わかめを例にとると、、、、、。

『あんまり仲間同志でぎゅうぎゅうしてたら、息苦しいし、海の養分も思うように摂れないなぁ』

過密養殖はしない。

『空気は苦手やのに、潮の満ち引きの度に海水の上に出てしまったら、表面がパサついて荒れてイヤだなぁ』

確実に海水から若布が顔をださないよう、また、急に育ち過ぎないようにブイの浮力を調整して、どんな波がきてもどのわかめにとっても良い環境を整えてこまめに観察してあげているんです。

たかがワカメ、されどワカメ。

ヒトもペットも、海草も愛情を注げば注ぐほど、豊かにまっすぐ育つわけです。そして、今年も村さんのご自宅でこの若布を食べさせてもらいました!

まず鍋にお湯を沸かす。生若布は、真ん中の芯のような部分とヒラヒラした部分を切り分け、どちらも食べやすい大きさに切る。

そして、若布を箸で取り湯につけて色が変わった瞬間に鍋から引き揚げ口に運ぶ。

見て見て!お湯につけるとこんなになるんです。

しゃきしゃきと音が出るほどの歯応えを感じ、限りなく淡く、しかしそのなかには、人が手を加えることが出来ない自然そのままの旨みが凝縮しているんです。

ポン酢も用意してくれてましたけど、わたしは何も付けずにそのまま食べる方が好き。

何もつけずに食べると、じわぁぁっとね、海で口に含んだ鳴門の潮の味と同じ味がして、海のなかで最も薄味の美味が口いっぱいに広がるのです。

〈取材・文 猪口由美〉
村さんのしゃぶしゃぶ用生わかめ
村さんの鳴門わかめ大セット

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