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こだわりの食を求めて 取材日記

2006/09/08 つち鯨のベーコン<その1>

2006年夏のある週末、外出先での仕事が珍しく早く終わった。
こんなことは年に何回もないもんだから、一週間の疲れを癒すべく、最近発売になったばかりのビールを買い込み、さぁて、飲むか!

冷凍庫に冷やしておいたビールグラスを取り出し、ビールを
空けたとたん、テーブルに置いていた携帯がブルブルブルッと騒ぎ始めた。

ん?誰や? と近づいてみると、ディスプレーには
わたしから「あるお願い」をしていた生産者の名前が。

さては、来たか!?

「もしもし〜。いのくちです」
『今日クジラが揚がりましたよ!』
「え! 何頭ですか?」
『1頭です。でもこれで今年最後です』
「さ、最後ですか! うぅぅ、解体は何時くらいになりますか?」
『水揚げの時間からして、夜の3時くらいからですねぇ』

「セコムの食」のカタログで掲載している『つち鯨のベーコン』は
千葉の沖合いで水揚げされるつち鯨を原料にしていて、予てより生産者の方に、水揚げがあったときには連絡がほしいとお願いしていたんです。でも、よりによって今夜とは、、。

珍しく早く仕事が終わって、これまた珍しく飲みにも行かずに
自宅に直帰したウラには、こんな仕掛けが待ち受けていたのね。

「食べ物の神様」は、どうやらわたしを徹底的に鍛えてくださるつもりらしい。休むな、休むな。
行ける取材は、全部行け! 知るべきことは山ほどあるって
ことなんだ。きっと。
 
パソコンのWebで現地までの経路を調べ、生産者に折り返し連絡し
「行きます!電車乗りついだら何とか行けそうです」と伝え、
汚れてもいい取材服に着替えて、いざ現地へ!
 
金曜の夜の、酔っ払いで満員となった電車を乗り継ぎ、途中、生産者と落ち合って、通り雨にぶつかりながらも、なんとか千葉の鴨川・和田港についたのは、深夜3時を回ったところ。 

時計の針は3時をさしている。

さすがにねむい。ねむいが、岸壁について、海をのぞいたら
いきなり、目が覚めた!
漆黒の海のなかには、同じく夜の海の色をした鯨がすでに息絶えた姿を横たえているではないか!

うわぁぁ〜っ。でっかぁぁぁい!
死んでるとわかっていても、こんなに間近に見るとドキッとしちゃうなぁ。
こんなに大きな生き物が海を泳いでいるんだぁ!
海って、やっぱりすごいや!

しかし、こんなに大きな鯨を、一体どうやって解体していくのかと思っていると、100mほど離れた、海沿いの建物に小さな灯りが入り、ひとり、またひとりと、職人さんらしき姿のおじさんが何処からともなく集まってきた。

それから20分ほど経って作業場全体が煌々と照らされると、こんな夜中にもかかわらず、クジラの解体を見学しにきた、家族連れがざっと50名くらい集まってきて作業場を取り囲んでいる。

クジラの解体って、このあたりの風物詩なのかなぁと思っていたら、突然、ガシッ、ジャリジャリっと電動のチェーンが動き出した。岸壁に浮かんでいたクジラは電動式の巻上げチェーンで引き始められ、ほどなく作業場には濃いグレーの巨体がゆっくりと姿を現した。

そして、電動チェーンの動きが止まると同時に、老若混じった職人たちが、一斉にクジラに近づく。

おぉ! 始まった!


・・・・つづく


〈取材・文 猪口由美〉
つち鯨のベーコン

取材時の写真

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