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こだわりの食を求めて 取材日記

2007/08/24 レストラン山崎 逸品の角煮/カレー<その2>

青森でフレンチレストランを営む山崎シェフを取材している最中、突然、名前が挙がった「畜産家の長谷川さん」。

山崎さんの話を聞くにつれ、ぜひお会いしたいと思い、この日はアポイントだけを取って、1ヵ月後に改めて青森に飛んだ。

この日は、前回以上の大雪で、さすが雪国!辺りは一面、真っ白、白、の白。

「私もご一緒しますよ」という山崎さんの厚意に甘えてレストランに集合後、シェフの運転する車で移動し、かれこれ2時間ほどかけて、海に程近い長谷川さんの牧場に到着。

1m以上雪が積もる牧場で、最初に出迎えてくれたのは、かわいらしい山羊。

長谷川さんのところは「長谷川自然牧場」という名前のとおり、単なる養豚場ではなく、まさに牧場で、豚、鶏はもちろんのこと山羊やエミューなど様々な動物たちが、たくさんいる。

一応、養鶏場はあるものの、鶏たちは雪の上をガシガシと歩き、人間が近づいても逃げやしない。

すっごいなぁ〜と思っているところに、長谷川さんが登場!まったく気取らない方で、野球帽とヤッケが良く似合うんだ。

時間もないことだし、まずは豚舎を見せてもらうことに。

手作り感のある豚舎は、できるだけ太陽光を入れるように工夫されていて、生育状況に応じていくつかに分けられている。

長谷川さんが近寄ると、豚たちは一斉に集まってきてブヒブヒいいながら、まるで親に甘える子供のようになついている。

なかには、こんな愛嬌のある豚ちゃんも!何ともかわいい〜!

次に、向かったのは、ここの牧場でもっとも大きな豚が集められている豚舎。

一般的な養豚場では8ヵ月くらいでの出荷が多いそうなのですがここでは、きっちり10ヵ月くらいまで育てているのだそう。
そうすることで、肉本来の旨みが表現できるのだという。

「へぇ〜、そうなんですか」と感心するわたしが、ふと豚舎に目を移すと、なんとわたし目掛けて、すっごい勢いで突進してくる大豚がいるではないか!

「ぎゃーっ!こわいー!」と逃げるわたしに、長谷川さんが
『きっと、餌をくれると思って走ってきたんだよ』と、山崎さんともども、大爆笑。

ったくもう、あんな図体の豚に突進されたら、さすがのわたしも、吹き飛ばされちゃうわ。

その後、長谷川さんがもっとも注力している、動物たちの餌が置いてある倉庫に向かう。

長谷川さんのポリシーは、
「人間が食べられるものを動物たちにも、できるだけ食べさせる」

だから、倉庫には大量の食パンやジャガイモなどが山積みされているんです。

食パンは、地元の大手パン屋から、賞味期限が1日過ぎたものを運んできたもので、ジャガイモは、ポテトチップスの メーカーが買い付けたジャガイモのうち、商品にできないような小さなものを、長谷川さんが引き受けるんです。

そして『ここに来た人は、みんな食べてるから、あんたも食べて』と言われて、差し出されたのは、そのジャガイモを茹でたもの。
イコール、豚ちゃんが食べているもの。

屋外に置かれた古くてでーっかい鍋で、かなり豪快に茹でられていて鍋の蓋には、トタン板が使われている。

皮付きの小さなジャガイモを手渡されて、恐る恐る口に入れてみると・・

「あまーい」「おいしいじゃないですか!」

『そうよ、だってポテトチップスのなり損ねだもん』と、長谷川さん。

なるほどね〜。
こんな餌を食べていたら、豚だって鶏だって美味しくなるにきまってる。 豚も鶏もヒトも、生き物はすべて、口にするもので身体が成り立っている。

「今日食べたものが、明日の私になる」んですもん。今日の食事は、手が抜けません!

長谷川さんの思いをしっかりと受け止めた山崎さんが手がける料理はね、全てホントに美味しいの。

実は角煮には、誕生秘話があって・・・。

「山崎さん、この角煮、すっごく美味しいんですけど、もしかして、醤油を変えたらもっと美味しくなると思うんです」 と、わたしが投げかけてみたんです。

すると、山崎さんが『わかりました。この角煮にあう醤油を探してみます』ということになり、3週間後に吉報が届いたんです。

『いい醤油を見つけました。正田醤油に決めました』

「えっ?そりゃまた、いい醤油を選びましたねぇ。だけど、あれだけ旨みの強い醤油を使うと、味のバランスが崩れませんか?」

『大丈夫です。うちのブイヨンなら負けませんからね』

かくして出来上がった角煮は、どこに出しても恥ずかしくないほどの旨みをもったたれと、長谷川さんが精魂込めて育てた豚肉の甘さに溢れているんです。

ついでにいうと、カレーだって絶品。
豚の旨みが全体に行き渡っていて、実に庶民的で親しみの持てる穏やかな味わいなんですね〜。

いままでいろんなシェフを取材してきましたが、山崎さんは、抜群に誠実でフトコロが深いヒト。

山崎さんと長谷川さんのコラボレーションをぜひ、ぜひ、ぜひ、食べてみてくださいね。   

〈取材・文 猪口由美〉
レストラン山崎の逸品の角煮
レストラン山崎のカレー

取材時の写真

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