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フランス取材日記
ドメーヌ・ベルトー
ドメーヌ・ベルトー
まさに絵に書いたような職人登場

 10月20日午後。シャンボール・ ミュジニー地区を走る国道を逸れ、細い道を何度か折れた先に見えてきたのがドメーヌ・ベルトーの自宅兼ワイン蔵だ。オレンジにペインティングされた背の高い門扉をくぐると、見事なまでに育ったもみの樹がある。最初に姿を現したのは、御年70歳を越えるピエール・ベルトー。上背はなくやや前かがみでまったく笑顔を見せず視線はまっすぐ。眉間には深く刻まれた皺とぎゅっと結ばれた口元。しかしながら機嫌が悪いわけではなく、必要なことは早口でボソッとつぶやく、まさに絵に書いたような頑固職人だ。

笑顔で登場、フランソワ

 早速、試飲をさせてもらうべく地下の蔵へと移動。蔵には多数の225リットル入りの木樽、そして大樽が二つ並んでいる。この言葉の通じない職人相手にどう取材をはじめようかと思っていたところに息子のフランソワ・ベルトーがやってきた。彼の方は、いたって物腰がやわらかく父と違って社交的だ。この蔵ではぶどうの栽培をフランソワが、醸造は7代目当主のピエールが中心に行なっている。肥料には魚糟や腐食土などを使用し、畑に必要以上の負担を与えないようにしているが、最近流行のビオディナミは、世間の風潮にのった俗っぽさを父が嫌うのだという。

ワインの哲学を問う

 ピエールに自身の哲学を聞いてみた。「この繊細なぶどうが実る土地の個性を生かすために、タンニンが前面に出過ぎないように注意している。そのために新樽は使わず、果汁を搾るときは茎をすべて外して果実だけを使うんだ」。シャンボルミュジニーはピエール自身が優雅な女性をイメージして醸造したもので洗練された果実味を持ちそれでいて十分なコクがある。対して、ボンヌ・マールは筋骨隆々のパワフルな男性の印象。どこまでも力強く、早飲みするときにはデカンタに移して飲むほうが良く、長熟により本来兼ね備えた実力が発揮できるタイプ。そのボンヌ・マールのぶどう畑に案内してもらうことになり、ここで父・ベルトーとはお別れ。名残り惜しい。

贅沢ゆえに生まれる味わい

 畑はとても丁寧に手入れされている様子が伝わってくると同時に、積み残したぶどうがとても目に付く。聞くと、この蔵では収穫は一度だけで、そのときに熟してなかったぶどうはそのまま放っておくのだという。二度摘みをすると収穫量は増えるけど、一番摘みにこだわるがゆえに、生まれてくるコクを大切にしているのだ。贅沢すぎる味わいの秘密はここに残されたぶどうたちが雄弁に語っているようだ。

→取材日記「シャヴィー・シュエ」へ



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ボンヌマールの畑。

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穏やかで人当たりのよいフランソワ。ぶどうの栽培は主に彼が担当している

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職人肌のピエール(中央)と柔和な性格のフランソワ(右)。左はこの日記の著者で「セコムの食」ライター 猪口由美